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会長挨拶
一般社団法人 繊維学会会長 大田康雄 |
ご挨拶
この度、伝統ある繊維学会会長という重責を拝命いたしました。浅学の身ではありますが、会員の皆様、並びに関係各位のご協力の下、誠心誠意努める所存ですので、何卒よろしくお願いいたします。
今回の役員改選は、旧執行部より提案があった、いわゆる“三学会統合案”が昨年9月の臨時総会にて否決となった結果、前任の理事・監事全員が総辞職されるという異例の事態の下、実施されたものです。従って、今回の総会で選出された理事・監事は、任期1年という変則的な体制でのスタートとなります。私自身、このような経緯の下、新執行部としてまずこの1年間で取り組むべきは、学会の土台をもう一度しっかり固めることであると考えています。
一つ目の土台固めについては、コロナ禍において、希薄になっていた学会での相互の情報交換の機能を回復させる事です。まずは、本年度実施された年次大会が完全対面形式にて活況の中で開催された事は、非常に喜ばしい限りです。今後も繊維学会の諸事業に関して、Face to Faceの良さを復活させる一方で、リモートならでは利便性も併用しながら ポストコロナ下での学会の運営に関して早晩、巡行速度に戻していきたいと考えています。
土台固めの重要な二つ目は、前述の三学会統合問題であります。荻野前会長はじめ前理事会の一方ならないご尽力がありましたが、最終的には否決となりました。投票結果では過半数を大きく超える賛成票があったものの、一方で少なからぬ数の反対票もありました。この反対票に関して、直近のアンケート調査の結果では、いくつかの課題に関しての執行部側の説明が不十分であったり、議論が十分尽くせて無い事を理由に挙げる方が相当数あり、一方でそれらの疑問点が解消され、合併に関しての将来像などを含めた環境が整備されれば賛同できるとのご意見が多くありました。逆に、未来永劫に統合に絶対反対であるという方は極く一部という結果でした。従って、本課題は新しい体制においてもしっかりと総括して検討せよというのが大多数の会員の共通意見と理解し、新体制でも本件を最優先の課題として、まずは過去の経緯と結果について虚心坦懐に再度総括し、早晩に新執行部としての方針を提案させていただきたいと考えております。
そもそも三学会統合は、この激動の世界において、繊維学会の今後の有るべき姿、将来に渡り持続可能な社会に貢献すべき役割を考える中で、重要な手段の一つとして提案されたものと理解しております。従って、三学会統合問題とは切り離しても本来の目的である繊維学会の有るべき姿、ビジョンに関する議論は前理事会から引き継いだ、土台固めの重要な課題として、この一年、しっかり会員の皆さんと議論させていただきたいと考えております。また、それを支える執行部・理事会等の運営に関しましては、アンケートの要望にもありました通り、議事の進行や決定プロセスを今まで以上に透明化し、会員の皆さん、特に学会の将来を担う若手の皆さんのご意見がしっかりと反映されるような運営を心がけていきたいと考えています。
ここで、繊維学会のあるべき姿に関して少し私見を述べさせていただきます。繊維の将来ビジョン、特に日本の繊維産業の未来像に関しては、ご承知の通り、一昨年に経産省を中心に制定されました、いわゆる繊維ビジョン2030や繊維技術ロードマップが一つのベースになろうか存じます。ビジョンが示すところを拝読すると、繊維学会が従前より果たしてきた、産官学が結集して学術・学理の探究や討論を通じた繊維科学の発展を目指す、言うなれば知のプラットフォームとしての役割に加え、新しい産業を興すための言わばイノベーション創出のプラットフォームとしての役割が、今まで以上に期待されているという事では無いかと考えております。私は繊維学会が今まで培ってこられたストックをしっかりとコーディネートする仕組みを作れば、そのポテンシャルは十分にあると考えてます。
一方で、繊維学会としては、上述の様にフローを生み出すだけでなく、ストックそのもの、つまりは主に大学で行われる基礎研究に関して、いかに世界の諸問題に先回りして、研究テーマを戦略的・重点的に設定していくかを、産官学で共に考える場としての繊維学会、これも車の両輪として重要なミッションでは無いかと考えています。現在、欧米でのイノベーションの多くは大企業で無く、大手企業からのカーブアウトしたベンチャー企業や大学の基礎研究に由来するスタートアップがその中心を担っております。この様な国家の戦略的重点分野においても、大学の基礎研究やスタートアップに資金が流れるエコシステムが欧米では既に確立しているということです。日本でも今回の繊維ビジョンで設定された戦略的な分野において、遅蒔きながら基礎科学にも重点投資される様な戦略、例えばエコシステムの構築に対する国を挙げての施策などを学会としても働きかけて行く必要があると考えています。
繊維学会は来年80周年を迎えます。繊維学会が世界の持続可能なイノベーションにストック・フロー両面で貢献できるために、先程述べました通り、学会として今後どうあるべきか?学会員の皆さまにとって有益なサービスや仕組みなど優れた部分、残すべき所は残し、変えるべき所はスピード感を持って変えて行く、そのために必要なアクション事項に関してロードマップ等、繊維学会の将来構想ビジョンの中で会員の皆さんとしっかり議論して参りたいと考えています。
会員ならびに関係各位におかれましては、今まで以上のご指導とご鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げます。
最後になりますが繊維学会の益々の発展と皆様方のご清祥を祈念いたしまして、少々長くなりましたが就任のメッセージとさせていただきます。
令和5年7月吉日
(一社)繊維学会会長 大田康雄
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